本日、第42回卒業式を行いました。
今年1年間、制限の多い中、残念な気持ちがあったとしても常に前向きに、今できることに対して全力で頑張って、後輩に背中を見せ続けてくれた、3年生が立派に卒業していきました。
卒業生の皆さんの気持ちは、花小金井南中学校の伝統としてしっかりと受け継がれていくと思います。
卒業式 校長式辞
186名の卒業生のみなさん、ご卒業おめでとうございます。
保護者の皆様、お子様はここに9年間の義務教育の全課程が修了いたします。感慨もひとしおのことと存じます。お子様のご卒業を心よりお祝い申し上げます。
さて、卒業生の皆さんとは、1年間のおつきあいでした。3年間をこの花小金井南中学校で過ごしてきた皆さんにとっては、最後の1年間のみの関わりでしたが、私にとっては、1年間とは思えないくらい、多くの時間を一緒に過ごしてきたような気がします。昨年の3月に新型コロナウイルス感染症の対応として、緊急事態宣言が発令され、臨時休校となりました。ひとつ上の学年の先輩たちは、受験を終え、さあこれから卒業に向けて心地よい時間を過ごそうと思っていた矢先の、臨時休業で、3年間の集大成としての卒業式を行う準備すら十分にできませんでした。その当時は皆さんの先輩たちの学年が、このような状況であったことに多くの目が向けられて残念な気持ちでいましたが、4月以降も新型コロナウイルス感染症の終息が見られず、さらに臨時休業が2カ月続くことになり、本当につらい思いをすることになるのは、今、目の前にいる卒業生の皆さんだということを実感するようになりました。これまで先輩の活躍している姿を見てきた皆さんが、次は自分たちが後輩たちに花小金井南中学校の伝統の力を見せようと決意をしていたと思いますが、その力を発揮するべく大きな行事が中止となりました。行事だけでなく、部活動の大会などそれぞれの皆さんが、最後の1年にかけようと思っていることができなくなりました。そんな皆さんにどんな言葉をかけていけばよいのか悩んでいた時に、3年生の学年だよりに掲載されている作文が目に留まりました。その作文には、「花南中の伝統を受け継ぐためには」という題で「委員会活動」「部活動」「普段の生活」という3つのことが書かれていました。伝統を受け継ぐために「委員会」についてはこれまで先輩に頼っていたことを自覚しているところから、自分の考えを整理して簡潔にそして丁寧に伝えて発信することを心掛けるということ。「部活動」については、最後の大会ができず、不本意な気持ちで引退することになってしまったけれど、試合などを通じて伝えられなかったとしても、裏方の仕事や部活動のあり方という形で伝えられるはずなので伝えたいということ。また、後輩たちには部活動ができることに感謝して全力で取り組んでほしいという思いを伝えること。そして最後に「普段の生活」については、3年生が全員で残せる一番の方法で、休み時間と授業のメリハリをつけるという、先輩が見せてくれた素晴らしい姿を伝統として残すべきだと。そして、この3つのことを意識して花南中の伝統を受け継ぎ、きれいに花南中を卒業していきたい。という内容でした。この作文を読んだとき、今の状況を悲観して、足をとめるのではなく、自分たち3年生がこれまでの花南中の伝統をどのような形で受け継ぎ、そして引き継いでいくのか前向きにとらえている強い気持ちに触れることができました。特に「普段の生活」なら自分たち3年生が全員でできることとして後輩に背中を見せられるという気持ちは、本当に誇らしいと思いました。こんな素敵な気持ちでいてくれる生徒の皆さんと今年だからこそ味わえる貴重な時間を一緒に過ごしていきたい。そして、今日この卒業の日を迎えたときに、すべての卒業生の皆さんが「花南中で過ごして幸せだった」と思えるように先生をはじめとして皆さんに関わる全ての人が全力で支えていこうと改めて決意した瞬間でした。
作文にもあった委員会活動については、3年生の思いがとても感じられました。初めて行われた委員会活動の様子を見ましたが、どの委員会も3年生が中心となって1,2年生に仕事の内容などを説明したり、どのようなことを注意して活動したらよいかなど丁寧に指導したりしていました。その姿はとても頼もしく、まさに後輩が憧れる先輩の姿でした。その後に行われた代表委員会では、各委員会の委員長などから、コロナ禍でできることは何か、委員会の枠を超えて議論していました。もっとできることがあるのではないか、そして学校を少しでも明るく盛り上げていきたいというやり取りがあり、また私が生徒の皆さんから元気をもらったような気持ちになりました。まさに伝統を受け継いだ力を見せてもらいました。
卒業後の進路についても例年と違う対応が続き、皆さんは大変だったと思います。多くの高等学校等の文化祭が中止になり、説明会もネット上の動画や資料を見ることでしか情報を得られず、実際に見学などが思うようにできない中で進路希望を考えなければならない状況があったと思います。それでも、コロナ禍で意識してきた、まず自分で考えて行動するという気持ちをもって自らの進路に向き合うことができたことは素晴らしかったと思います。また、進路面接練習では、この中の多くの人と話をすることができました。「3年間の中学校生活で一番印象に残っていることは何ですか」という問いに対して最も多かった答えは「花南オリンピック」でした。各学年がラジオ体操と全員リレーに取り組みました。今年度初めて、全校生徒が同じ場所に集まることができた行事となりました。クラス全員の気持ちをひとつにして同じ目標に向かって頑張った取組だったので、とても印象に残っていると答えている生徒の皆さんが多かったのですが、その中で印象的だったのが、「先生たちが私たち生徒たちのために考えてこのような取組を準備してくれたことに感謝したい」というようなことを私の前で語る生徒がたくさんいたということです。先生たちが私たち生徒を信じてできることを考えて…という気持ちが嬉しかったのですが、皆さんの日々の努力、そして制限が多い生活をしっかりと考えて行動してくれているからこそ、それが先生を動かす原動力になっていたということを今ここで皆さんに伝えたいと思います。本当にありがとう。
花南オリンピックの1年生の全員リレーでは各クラスの先頭で特別支援学級7組の生徒が走りました。1年生の各クラスに7組の生徒が混ざった形でのレースは私自身初めての経験でした。事前に1年生の各教室で7組の皆さんと交流をして当日を迎えました。通常の学級と特別支援学級がひとつのバトンをつなぎ、一緒にゴールを目指すことができて「花南の絆」がさらに深まったのではないかと思いました。7組の皆さんについては、例年行われていた多摩地区で行われる行事がすべて中止となりましたが、上級学校訪問や校外学習、マラソン大会などが校内で実施できたことは皆さんの大きな成長につながりました。小金井公園を一緒に走ったマラソン大会は私にとっても一生忘れることのない思い出となりました。7組の皆さんがそれぞれ自身の課題に向き合いこの3年間で成長したことは本当に素晴らしいことです。自信をもってください。
最後に、卒業生の皆さん、これからの人生は順調にいかないこともあると思います。実際に昨年からのコロナ禍でのさまざまな対応もそのひとつであると思います。それでも私たちは一人ではありません。さまざまな困難に直面した時、まずは自分で考えることが必要ですが、それでも苦しいときは周りを見渡してみてください。きっと力になってくれる人がいます。そんな時は決して無理をせず、周りの人と力を合わせてその困難を乗り越えてください。きっと大丈夫です。大きな夢をもち、自分を信じて、あわてず焦らず一歩ずつ前に進んでください。明るい未来が皆さんの前に大きく広がっているはずです。
卒業生の皆さんの前途が幸多いことを祈り、校長式辞といたします。
令和3年3月19日
小平市立花小金井南中学校
校長 堀井 賢治